「…おや、今日は彼も一緒ですか。」
「すみません新川さん。彼の家までお願いします。」
『神』の企画するイベントに参加したわが機関員と、
神の『鍵』を車に乗せました。
女性方は先に別のタクシーで返したようですね。
私と同じ機関員の一樹君と、『鍵』であるキョン君は後片付けを頼まれて遅くなったのでしょう。
一樹君は役割と割り切っているところがありますが、
キョン君も遅くまでよく付き合っているものです。
一樹君からもよく聞いていますが、
本当に彼は懐が深い。
私も感心するほどです。
決して神の言いなりになっているわけではないのに、
同時に受け入れている。
そんな彼も少し疲れたのか、
今日は一樹君の肩でよく眠っています。
そんな彼を見つめる一樹君の眼も見たこともないほどやさしい。
一樹君も随分と変わったものです。
最初に会った時はそれは張り詰めた表情でしたが、
今は…。
そう思い出しながらバックミラーに視線を向けると。
おっとっと。
「一樹君。」
「うわ!」
「私がいることをお忘れなく願いますよ。」
「す、すみません!!」
若いですねえ。
上の方が知ったらただじゃ済まないでしょうに。
でも私は二人を味方しますが。
年をとってるくせに上でごちゃごちゃ考えてぶつぶつ文句言ってるだけの連中に、
毎日体当たりで頑張っている若者の邪魔をさせたくはありませんから。
まあ私も年だけはとっていますがね。
この程度の我儘も構わないでしょう。
見つめる側には見つめる側なりの感じ方というものがありますし。
私もその感じるままに行動したいこともありますから。
end
素敵おじさまな新川さん視点です。
意外と評判がよかったんで嬉しかったですね。
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